麻布大学環境科学科では、2022年夏の生物季節観測として、学生によるキャンパス内でのセミの鳴き声と抜け殻の観測・調査を行いました。環境科学科では国立環境研究所が実施している生物季節モニタリングの全国調査員調査に参加して共同研究を行なっており、この観測結果は全国モニタリング調査結果として全国で共有されます。また、相模原市の自然環境観察員制度による5年に一度のセミの鳴き声分布調査と鳴き声カレンダー調査が令和4年度に実施され、これにも参加しました。キャンパスでの調査結果は相模原市自然環境観察員制度の調査結果として収録されるほか、相模原市立博物館の令和4年度「学びの収穫祭」でポスター展示による発表を行ないます。
麻布大学キャンパスでのセミの鳴き声と抜け殻調査は、2022年6月下旬から9月末まで、毎週月曜から土曜の朝10時ごろと夕方16時ごろに学生がキャンパス内を巡回して、鳴き声、姿、抜け殻を観察・調査しました。その結果、キャンパス内でニイニイゼミ、アブラゼミ、ミンミンゼミ、クマゼミ、ツクツクボウシの鳴き声が確認されました。抜け殻が採集できたのは、ニイニイゼミ、アブラゼミ、ミンミンゼミでした。週6日の観測・調査を行なったことにより、アブラゼミに先立ってニイニイゼミが羽化していること、キャンパス内で羽化している個体数はアブラゼミが最も多いこと、クマゼミは飛来しているとみられることなど、セミの生息状況と鳴き始め・鳴き終わりに関する詳細なデータが得られました。
このデータをキャンパス内で観測している気象水文データ(気温、湿度、土壌水分)と比較するとともに、気象庁による過去約70年間のセミの初鳴きデータと気候変動データの関係を解析するなど、気候変動とその生物影響に関する教育・研究に活用しています。
(特任助教:高田久美子)
セミの抜け殻調査の様子と、1日で採取した抜け殻の例(2022年8月3日)