生命・環境科学部「環境科学科」

環境は今が一番面白い

大学院生および卒論生の研究成果が国内誌に早期公開されました。

神奈川県に定着したクリハラリスの由来を遺伝的に調べた論文が保全生態学研究に早期公開されました。

江口勇也・佐久間幹大・舩越優実・東典子・嶌本樹・片平浩孝 “神奈川県に定着した特定外来生物クリハラリスCallosciurus erythraeusの地理的由来:台湾を原産とする3系統の混在” 保全生態学研究 (公開日: 2024/06/01)
https://doi.org/10.18960/hozen.2324

神奈川県内で撮影されたクリハラリス(山田瑠璃氏 撮影)

研究のウラばなし(教員の声)
この論文では、環境生物学研究室に所属する卒論生2名(佐久間さん・舩越さん)とともに博士後期課程の江口さんが意欲的に分析・執筆を進めました。共同研究者である日獣大の嶌本先生や東京農大の東先生にお力添えを頂きながら、2年越しの労力を割いてようやく公開となった次第です。

遺伝的背景を知ることで、外来種がどこからやってきて、現在どのような集団を形作っているのか理解することができます。今後の分布拡大や分散ルートを推し量るうえでも有用な情報となるのですが、こうした研究は地域限定かつ記載的であるため、それだけをメインに研究費を獲得することが難しい状況にあります。今回は学内の経費をうまく活用して分析費用を捻出し、コンパクトに必要最低限のデータを出すことができたと思います。理想を言えばもっとたくさん調べて完璧なデータにする選択肢もありましたが、基礎的な情報が不足しているケースでしたので、まだまだ需要があるとして論文化を進めていきました。


研究のウラばなし(筆頭著者の声)
本件の公開に先立って、浜松市に定着した外来リス類の遺伝的背景に関する論文を哺乳類科学に寄稿させて頂いています1)。ミトコンドリアDNAの部分配列を使って対象生物の集団構造を明らかにしていく工程が楽しく、今回も歴史的経緯と照らし合わせながら移入の過程を自分なりに推理する作業に夢中になりました。共同研究先の先生とやりとりをさせて頂いたことも、指導教員との日常的な議論とは一味も二味も違う学びがあり、考え方を含めて大変勉強になりました。改めてサポート頂いた先生方に感謝申し上げます。


参考文献
1) 江口勇也・佐久間幹大・坂西梓里・遠藤優・鈴木良実・千々岩哲・嶌本樹・片平浩孝 (2023) “浜松市に定着したCallosciurus属リス類の遺伝的集団構造:ミトコンドリアDNA D-loop領域に基づく追跡調査とフィンレイソンリス由来ハプロタイプの優占” 哺乳類科学 63, 53-62.
https://doi.org/10.11238/mammalianscience.63.53